バイオマテリアル業界に必要な新しい協業の形
サステナビリティやSDGsへの対応が求められる現代において、植物由来素材や微生物分解性素材などのバイオマテリアルは、研究者と企業の双方から注目を集めています。しかし、素材を開発できる研究者と製品への応用を求める企業が効率的に出会う仕組みは、これまで十分に整備されてきませんでした。
従来の素材開発は、各企業が自社の研究所内で完結するクローズドモデルが主流でしたが、現在は複数の技術・アイデアを持ち寄るオープンイノベーションの重要性が高まっています。この潮流は、複数分野にまたがるバイオマテリアル領域において特に顕著です。
オープンイノベーションの重要性
一つの企業が研究開発から製造・販売まですべてを自己完結するクローズドモデルは、化学・生物学・工学など複合的な専門知識が要求されるバイオマテリアル領域では特に限界を迎えやすいといえます。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のオープンイノベーション推進施策でも、異分野連携の有効性は広く認められています。
実例:研究者と企業のマッチング
例えば、大学の研究室が木材から高強度繊維を製造する独自技術(シーズ)を持っている一方で、自動車メーカーが軽量・高剛性の部品素材(ニーズ)を求めているとします。この2者が出会えば大きなイノベーションにつながる可能性がありますが、通常の業務を通じてこのようなマッチングが実現することは容易ではありません。研究者と企業を繋ぐ産学連携プラットフォームは、まさにこのギャップを解消する役割を担っています。
世界の成功事例から学ぶ
オープンイノベーションの力を示す代表的な事例として、日用品大手P&Gの「Connect + Develop」戦略が挙げられます。同社は自社開発に閉じるモデルを転換し、世界中の発明家・研究機関からアイデアを積極的に取り込むことで、開発スピードと商品ラインアップの両方を大幅に強化しました。P&G Connect + Developは、オープンイノベーションの実践モデルとして国際的に広く参照されています。
日本企業の取り組み
日本でも政府がオープンイノベーションを後押しするための税制優遇措置を設けており、産業界への普及が進んでいます。NEDOの「オープンイノベーション白書」によると、日本企業がオープンイノベーションに期待する効果として「開発のスピードアップ」や「自社にない技術・アイデアの獲得」を挙げる割合が特に高く、クローズドモデルの限界が広く認識されていることがわかります。
バイオマテリアル分野は、化学・生物学・工学・デザインが交差する複合領域であるため、オープンイノベーションによる異分野連携の効果が特に大きく期待できる分野です。産学連携プラットフォームは、今後の日本のものづくり競争力を支える重要なインフラとなるでしょう。
出典:NEDO「オープンイノベーション白書 第三版」
異分野融合が生み出す未来
一つの専門分野の「深さ」と同時に、その専門知識を他分野と「繋げる」「広さ」が、今後の材料開発においてますます重要になっています。企業のニーズと大学・研究機関のシーズを可視化し、効率的にマッチングさせることで、単独では到達できないイノベーションが生まれます。例えば、廃棄物処理の課題を抱える食品企業の素材とバイオマスプラスチックの成形技術を持つ製造企業が結びつくことで、新たな製品カテゴリーが創出されることがあります。
異分野の技術・アイデアの掛け算によって、現在は廃棄されているものが将来の主要素材へと変わる可能性があります。バイオマテリアル領域におけるオープンイノベーションの促進は、持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みといえます。