バイオベースレザー市場が2032年へ拡大、素材転換の勝者は誰か
ニュースの概要
アットプレスで、バイオベースレザーの世界市場を2026年から2032年まで予測する調査レポートが紹介された。バイオベースレザーとは、石油から作る合成皮革でも動物の革でもなく、植物や菌類、農業の残りものなどを原料にした革代替素材のことだ。環境負荷を減らしたいアパレル、自動車、家具、雑貨の各業界で採用が広がり、市場は今後数年で着実に大きくなるという見立てである。素材の種類、用途、地域ごとに市場を分けて見通しを示している点も特徴だ。ここでは、この予測が現場の素材選びや調達にとって何を意味するのかを、独自の視点で読み解く。
引用元: バイオベースレザー市場―2026年~2032年の世界市場予測(アットプレス)
分析・見解
予測の数字より、素材が入れ替わる順番に注目したい
市場予測のレポートは、成長率の大きさばかりが話題になりやすい。だが実務で大事なのは、どの用途から先に置き換わるかである。
私は、最初に動くのは靴、財布、スマートフォンケースのような小さな部品だと見ている。使う面積が小さいので、素材が高くても製品全体の価格に響きにくい。失敗したときの損失も小さい。
自動車の座席や大型ソファは、後から来る。面積が広く、耐久性や難燃性の試験も厳しいからだ。市場が伸びるといっても、一斉に広がるわけではない。
キノコ、パイナップル、りんごの搾りかすという三つの流れ
原料は大きく三つに分かれる。キノコの菌糸(=カビやキノコの根にあたる糸状の組織)を培養して作る素材、パイナップルの葉の繊維を使う素材、そしてりんごやぶどうの搾りかすを混ぜて作る素材である。
キノコ系は質感が本革に近い一方、量産の設備投資が重い。実際、先行した欧米の新興企業の中には、工場建設の資金繰りで計画を見直した例がある。パイナップル系は、農家が捨てていた葉を使うので原料が安く、アジアの産地と相性がよい。
搾りかす系は、ワイン産地のイタリアなどで実績が積み上がっている。ただし多くは、植物原料に石油由来の樹脂を重ねた構造だ。「バイオ」という名前でも、含有率には幅がある点は見落とせない。
本当の競争相手は動物の革ではなく安い合成皮革である
多くの記事は、本革との比較で語る。しかし値段の面で直接ぶつかるのは、ポリウレタン製の合成皮革だ。市場には1平方メートル数百円台から出回っている。
バイオ系は現状その数倍から十数倍の価格になる。この差を埋めるのは、環境意識だけでは足りない。規制と大手ブランドの調達方針が価格差を正当化する仕組みになる。
欧州では、製品の環境情報を開示させる流れが強まっている。石油由来素材に不利な基準が増えるほど、バイオ系の割高感は薄れていく。逆にこの追い風が弱まれば、成長は鈍る可能性がある。
独自の見方:成否を分けるのは素材の性能より廃棄の出口である
私が最も重視したいのは、使い終わった後の扱いだ。堆肥にできると宣伝する素材でも、実際には接着剤や表面加工が混ざり、家庭では分解されないことがある。
企業が「環境に良い」と主張して、後から根拠を問われる例は衣料業界で相次いだ。素材の強度や見た目の競争が一巡したあとは、回収や再利用の仕組みを持つ陣営が評価されるだろう。
ビジネスへの影響
全面切り替えではなく、小さな部品から試す
調達担当者がまずやるべきことは、全製品を一度に変えることではない。財布、ベルト、ラベル、靴の内張りなど、使う面積が小さい部品から試すのが現実的だ。
半年ほど販売して、返品率と顧客の反応を見る。この小さな実績があれば、次の判断が速くなる。素材メーカーとの量の交渉でも、試験導入の数字が材料になる。
価格差を前提にした見せ方と契約の工夫
バイオ系は当面、割高になる。そのため値上げの理由を、顧客にわかる形で示す工夫が欠かせない。原料の産地、含有率、廃棄方法を、タグや商品ページに具体的に書くとよい。
一方で調達側は、供給元を一社に絞らないことが重要だ。新興企業は資金難で突然生産を止める例があるからだ。最低でも二社から仕入れ、品質基準を共通にしておくと安心できる。
契約では、量の下限だけでなく、価格の見直し条件も入れておきたい。量産が進めば単価は下がる見通しなので、その成果を分け合える形にしておけば損をしにくい。
確認すべきは第三者の認証と含有率の根拠
導入前に、バイオ由来の割合を示す検査結果があるかを必ず確認する。数字の根拠が曖昧な素材は、後で説明責任を問われるおそれがある。